聖印と神像

テメリオの信者は、小さな四角い金属片を、対角線を境に黒白二色の三角に塗り分けたものを聖印としています。これは毒と薬を象徴しているとされます。
テメリオの神像は、冷たい笑みを浮かべた白衣の老人の姿で作られます。その衣服にも、顔や手などの露出部分の肌にも。さまざまなしみが意図的につけられています。

神格と教義

テメリオは第二の剣に連なる、神格を得て間もない小神の一柱です。その前身は“腐敗の女神”ブラグザバスを信仰する神官であると同時に、優れた薬師であったと伝えられています。
　しかし、彼の卓越した薬師としての技が、病に苦しむ人々を助けるために使われることはありませんでした。テメリオはときに他者を毒で苦しめることで快感を覚え、ときに自ら調合した麻薬によって快楽にふける生活を続けていました。彼の薬師としての優れた技量は、ただただ己の快楽を追求するためだけにあったのです。
　そして、まさにその毒と薬を作り、操る技量によってテメリオは神への階梯を上ったとされています。これが事実であるとすれば、彼はただ薬師としての技量のみをもって人という存在の限界を超え、神格を得るに至ったと言えるでしょう。

　こうした経緯によって神格を得たテメリオは、何も導かぬ神です。「改める者に薬を、改めざる者に毒を」という言葉を教義としていますが、信者に力を与えはしても、その力は信者が求める快楽を得るためならばどのような使い方をしてもよいと説き、力や立場に劣るものを利用し、使い捨てることを当然のこととします。
　この教義とも言い難い教えを守って生きていく中で、テメリオの信者たちが作り上げた布教の方法は極めて過激なものでした。まず、他者を拉致してきて薬物と脅迫による洗脳を行い、無抵抗にして従順、己の意思を持たぬ奴隷に仕立て上げた上で祈りを強制するのです。こうした手法が結果として死や障害につながることをまったく忌避しません（「当然のこと」なのですから）。

　こうして「作られた」信者たちは、一般社会や家庭からは切り離され、上位の指導者のもとに集まり、その指示で動きます。信者の生活に必要な物品は、組織的な略奪によって賄われます（同時に拉致も発生し得ます）。通貨による経済が発達している地域であれば、教団に伝わる製法で作った麻薬を売りさばいて金銭に換えることもあります。
　教義そのものが極めて反社会的であり、人族の社会では、教団は偽装や潜伏によってのみ存在し得ます。一般には知られていませんが、信者は小さな四角い金属片を対角線で黒白二色に塗り分けたものを聖印としています。薬と毒の象徴です。


　現在ユーシズ周辺では、テメリオ教団に属する者たちの一部が裏で暗躍しています。しかし、その規模や具体的な活動内容、拠点の所在について詳しく知る者はいません。教団の存在自体、一部の者にしか知られておらず、またそれを広めてもいたずらに不安を煽る結果にしかならないことが明らかなため、「一部の者」たちも機会を伺っている状態なのです。

　テメリオ教団はその活動の性質上、潜伏能力に優れ、戦闘もこなせるような人員をそれなりに保有しています。教団に伝わる、世に知られていない様々な毒や薬物、そして特殊神聖魔法を使いこなす彼らは、敵対すれば大きな脅威となるでしょう。

格言

「改めるものには薬を、。改めざるものには毒を」

「我と彼は足してゼロ。彼が苦しむだけ我が楽しめる」

「苦痛は快楽の母」